1.MSPI遺伝子の多型性 熱帯熱マラリア原虫MSPI遺伝子の多型性の分子疫学的解析は、マラリアワクチンの開発やマラリア原虫の流行地における感染動態の理解のために重要である。この目的のためにフィールドにおいて適用可能な技術を開発した。その技術では、ギムザ染色血液塗抹標本から原虫DNAを分離してMSPI遺伝子多型をPCR法によって調べるもので、検討の結果、塗抹標本のDNAは少なくとも数年間は安定で、塩基配列の決定も可能であることが明らかになった。また、ソロモン諸島の流行地においてはMSPI遺伝子の著しい多型の分布が明らかになった。 2.MSPIのB細胞エピトープの決定 MSPIの機能と多様性を調べる目的で、C末端側19kD断片化部位のペプチド部分に対するモノクローン抗体を数種類作成し、そのエピトープ部位をピンシステムにより分子マッピングした。 3.MSPIのT細胞エピトープ部位の解析 熱帯熱マラリア原虫メロゾイト表面抗原MSPIにはヒトによって認識されるいくつかのT細胞エピトープが存在する。このエピトープ部位を決定するため、MSPIに特異的なT細胞株を3人の日本人から確立した。CD3^+、4^+、8^-、TCRαβ^+を示すT細胞クローンについて、MSPIのN末端側のM1からM6ブロックのポリペプチドによる抗原特異的増殖を見ると、いずれのクローンも変異領域であるM6のみに反応性が見られた。M6の228残基について13-16残基からなる重複オリゴペプチドを多種類作成してT細胞エピトープを決定したところ、T細胞クローンは5種類以上のペプチドを認識したが、どのクローンも異なるペプチドと反応し、その反応性にはMHCの遺伝的背景に依存することが示唆された。
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