今年度は百日咳毒素による末梢白血球増多症の誘発と抗体による抑制を中心に検討した。PTサブユニット及び各サブユニットに対するモノクローナル抗体を用いて研究を進めた結果モノクローナル抗体によるPTの各生物活性中和能と白血球増多症の抑制との間には必ずしも一致は見られず、叉更にPTの投与ルートにより白血球増多症に対する抑制効果が異なるモノクローナル抗体が見いだされた。白血球増多症の抗PTモノクローナル抗体による中和のkineticsを見ると、中和抗体による認識部位の違いにより白血球減少のパターンに微妙な差異があり、白血球増多症の発症機構の複雑性を示唆すると共に、抗PTモノクローナル抗体が今後の解析に有用な材料と方法を提示した結果が得られた。そこで、代表的な抗PTモノクローナル抗体(IgG)のパパイン消化によるFab調製の条件を検討し、抗体による至適条件の差異についても検討を重ねた。但し、安全な保存条件を確立するのには、まだ検討すべき事が多く、Fabでの実験を軌道に乗せるにはいくつかの解決すべき点が残されている。一方、百日咳菌強毒株およびPT産生変異株由来のPTの各サブユニットをHPLCで効率よく分離精製し、限定分解によるペプチドを分画して蛋白化学的にPTの活性構造の解析を行う実験は目下準備段階である。従って真核細胞の接着分子、特にセレクチン類とPT構造的、機能的類似性をモノクローナル抗体との反応性及びサブユニット由来ペプチドによる拮抗阻害を通じて解析する実験及び細胞接着因子並びに情報伝達因子としてのBオリゴマーの作用とGTP結合蛋白質としてのSIとの相互作用を解析する実験は次年度からの主計画となる。
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