昨年に引き続き百日咳毒素(PT)によるマウス末梢白血球増多症の誘発と抗PT抗体による抑制のKineticsの検討を進めるため、導入すべき方法及び技術の再検討を行い、1)チャイニーズハムスターオヴァリー(CHO)細胞へのPT結合のKineticsをPTによる細胞集合活性を指標にして解析する実験及び、2)マウスリンパ節(頸部、腋〓、上腕、鼠径部及び腸間膜リンパ節)細胞へPT、PTサブユニットまたは変異PTをin vitroで作用させ、PTタンパク質結合リンパ細胞の作用をin vivoで調べると共にPTの細胞への結合を蛍光色素を用いて定性的に、ELISAにより定量的に解析する系の二通りの実験系を併用して実験を進めた。 1):CHO細胞へのPT結合速度はPTの用量に依存した。洗浄によるPT除去可能時間はPT添加後1時間(5pg)-0時間(150pg)であり、抗PT抗体による中和は4時間(5pg)から15分(500pg)後の投与でも完全に認められた。CHO集合活性を顕微鏡下で認め得る迄の最小時間は6.5(5pg)-1.5(1500pg)であり、大量のPTを用いても1.5時間未満に細胞集合を認める事が出来なかった。 2):マウスへのPT結合リンパ節細胞投与によって惹起された白血球増多症も1日後の抗体投与によって中和され、末梢白血球数の減少が認められた。この結果はPT抗原が長時間に亘って細胞表面などに抗体によって中和され得る状態で存在している可能性を示唆している。in vivoでのPTの局在の解析は本作用機序の解明に必須である。ビオチン化PT及び抗体と蛍光アビジン等を用いた種々の免疫細胞化学的手法によるPT検出条件を検討した結果PTによるリンパ節細胞の凝集活性と白血球増多活性との相関に関しても再検討の必要が認められた。
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