研究概要 |
本研究の目的はIgG-mRNAよりのインフルエンザウイルスHA蛋白質にたいするIgG抗体を作成する系を開発し、インフルエンザウイルス感染患者リンパ球よりIgGメッセンジャーRNAの分離とIgG蛋白質のin vitroでの発現法によるインフルエンザウイルスHAに対する単一抗体の作成である。 最近H鎖とL鎖を結合した抗体作製の報告がありこのシステム系にかえてインフルエンザウイルスHAにたいする抗体作成を試みた。この系はV_HとV_Lをリンカーで結合させる方法である 1。ハイブリドーマ-細胞よりRNAを抽出してH鎖、L鎖のプライマーをもちいてVHcDNA,VLcDNAを作成する。VH3′enndo,VL5′enndoを含むリンカーACGGTCACCGTCTCCTCAGGCGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGTGGCGGATCGGAXATCGAGCTCと結合させVH5′,VL3′プライマーをもちいてPCR法でリンカー付きのDNAを増殖させた。 2。このDNAをSfiI,NotIで切断して得られた切断片を発現ベクターpCANTAB5(ファルマシア社)のSfiI,NotI部位に挿入してコロニーを得た。 3。コロニーを30Cで増殖させIPTGによって抗体を発現させた ハイブリドーマ♯15より調整したpSFV15の発現をウエスタンブロットで確認したところperiplasmic fractionよりanti-tagで認識されるバンドが確認され、HLリンカーによる抗体作成はH鎖、L鎖を別々な蛋白として発現させるよりより安定な蛋白として大腸菌の中で発現できることがわかった。この抗体を用いてインフルエンザウイルスHAに対する特異性の検討を行ったがこの抗体はHA対するアフィニテイーが実際の抗体の約1/(1000)であった。なぜ効率が悪いのかについてはこの抗体にとってリンカーの長さが十分であったのか、cDNA合成中に変異が入ってしまったのかは現在のところ明らかではない。しかしこの方法を改良することによってin vitro抗体作成はインフルエンザウイルスHAに対するものでも作成することができることが示唆された。
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