研究概要 |
インフルエンザウイルスA/WSNとB/山形との交配によって、M遺伝子に変異をもち、MDBKおよびMDCK細胞に対する細胞融解能の極めて弱いA/WSNの変異体AWBY-140を分離した。そして、AWBY-140のMDBK細胞への多重感染と生き残った細胞の継代を繰り返すことによって、ウイルスの感染は許すが、感染によって死滅することなく正常に増殖を続けるMDBK細胞株(MDBK-R)を樹立した。こうしてできたMDBK-R細胞に100PFU/cell のAWBY-140ウイルスを感染させ、以後通常の方法で継代を続けた。ウイルスの産生は、3代以降は認められなかった。 1.25代継代した細胞(MDBK RR-25)内に、FB1,FB2,PA,HA,NA,NP,M,NSのウイルスの全遺伝子に特異的な塩基配列が、遺伝子特異的なプライマーを用いたPCR法によって検出された。また、RR-27細胞内には、ウイルスのM遺伝子と相補的なRNA(cRNA)、およびそのmRNAも検出された。このことは、ウイルス感染によって細胞が死にさえしなければ、インフルエンザウイルスの遺伝子は単独で、ウイルスの産生なしに長期間細胞内に存続しうること、及び遺伝子は恐らく複製しながら存続しているであろうことを示唆している。 2.M及びNS遺伝子について、存続している遺伝子はその全長に及んでいて欠損がないか否かを調べるために、それぞれの遺伝子の5'及3'端の特異的なプライマーを用いたPCRによって、塩基配列の増幅をはかったところ、RR-20から期待値通りの塩基数のDNAが増幅された。これらをプラスミドpUC19でクローニングし、それぞれの遺伝子について5クローンを選択してその塩基配列を決定したところ、潜伏遺伝子はいくつかの点変異を有していた。
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