SDJのゲノムライブラリーから遺伝子断片をクローニングして、得られたクローンの塩基配列を決定している。RT1.Hβについてはほぼ全塩基配列を決定した。この遺伝子には多くの欠陥があり、発現は不能であることが判明した。RT1.Hαについてはα1ドメインおよびα2ドメインの塩基配列を決定した。現在Hαのほかのドメインについて解析を行っている。決定されたHαの部分配列には欠陥が存在しないが、全構造を決定するまでは結論が得られない。しかし、たとえHαが発現可能な遺伝子であったとしても、完全なRT1.Hの発現はありえないと結論できる。 Hαから約10kb離れてH-2.0およびHLA.D0のα鎖のα1ドメインと高いホモロジーをもつ配列が発見された。この遺伝子をRT1.0αと命名した。H-2.0およびHLA.D0のα鎖はマウスおよび人では発現可能なクラスII遺伝子とされており、α鎖の位置は人ではDPαに近接し、マウスでも欠陥を持つDPα様の僞遺伝子に近く位置している。従って、それらのホモローグであるRT1.0αの染色体上の位置は人及びマウスにおけるものと似ていることがわかった。RT1.0αの発見により、これまでは、RFLP解析によって示されてきたRT1.H亜領域を、より物理的な単位で理解できたとともに、RT1.0αの生理的意義が新しい問題となるので、平成6年度中に、RT1.0αの解析を進めたいと考えている。
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