今回の研究はおもにRT1クラスII亜領域のなかで存在が予想させてはいたがその本体についての情報がほとんどなかった 遺伝子について構造解析をおこなったものである。その結果、RT1.Ha、RT1.Hb、RT1.DOaの3つの遺伝子のほぼ完全な構造を決定し、それらの発現の有無を明らかにすることができた。 1。HLA-DPA相当のRT1.Ha遺伝子は塩基配列上では発現可能な遺伝子であるが、通常のノーザン解析によってはmRNAは検出できなかった。しかし、ラットの脾臓 RNAを鋳型にしてRT-PCRをおこなうと、イントロンをスプライスしたRNA断片が増幅れたので、発現可能な遺伝子と考えられた。 2。HLA-DPB相当のRT1.Hb遺伝子は第3エクソンに7塩基の欠失が認められ、それより13コドン下流で、アミノ酸への翻訳が停止する。したがって、RT1.Hb蛋白は発現しないと考えられた。 3。RT1.DOa遺伝子は本研究の途中で開催された国際ワークショップにおいて、我々の研究にもとづいて命名された遺伝子である。この遺伝子はHLA-DNAおよびH-2Oaの相同遺伝子である。RT1.DOaは塩基配列上異常はなく、ノーザン解析によってmRNAを証明できたが、その発現は脾臓で最も強かった。RT1.DOaと対をなすRT1.DObはその塩基配列の一部(第3エクソン)のみが過去に報告されているが、その発現も脾臓において強くみとめられるので、RT1.DObも発現可能で免疫学的に重要な遺伝子であることが解かった。 4。マウスにおいてはHLA-DPAホモログ(仮称H-2Pa)が存在しないと考えられてきたが、ラットのプローブ(RT1.Ha)を用いてその存在が示唆された。
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