臓器移植に伴って出現する拒絶反応を制御する手段を講じることは、移植医学のなかの最重要課題の一つである。本研究ではdonor-specific transfusion(DST)を用いた生物学的抑制法と免疫抑制剤による抑制法及びそれらの併用法による拒絶反応の制御について検討し、以下の成果を得た。 1.アロ抗原反応性ヘルパーT細胞(Th)の多様性とDST感受性の差異 アロ抗原の認識様式及び細胞表面マーカーによりアロ反応性Thはいくつかのサブセットに分かれる。各々のサブセットはDSTにより寛容誘導されるものと、全く寛容に導かれないものが存在することがわかった。 2.アロ抗原反応性Thの寛容誘導の修飾 上記のDST感受性Thと非感受性Thの両者が作動するdonor-hostコンビネーションでは、前者の寛容誘導又は誘導された寛容状態が後者によって修飾され、寛容の破綻を来すことになることが示された。 3.DSTと免疫抑制剤による拒絶反応抑制への相乗効果 DST感受性Thと非感受性Thが作動するコンビネーションでDSTと共にsuboptimal doseの免疫抑制剤(薬物のみでは拒絶反応を殆ど抑制できない量)の併用により、拒絶反応が抑制できることが示された。
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