研究概要 |
昨年度に引き続きB/WF1マウス由来の自己反応性T細胞クローンの機能的解析ならびにTCR遺伝子とそのTCRの標的抗原ペプチドの解析を行なった.本年度は特にSCIDマウスに若令B/WF1マウス脾臓細胞とともにT細胞クローンを移入して,そのIgG抗DNA抗体産生誘導能を解析した.その結果,若令B/WF1マウスにおいて活性を示したT細胞クローンは,このSCIDマウスを用いた細胞移入の実験系においてもIgG抗DNA抗体産生誘導能を示すことが明らかになった.この実験で細胞移入を受けたSCIDマウスのtotal Ig量は抗DNA抗体の上昇の有無にかかわらず同程度の価を示していたので,病原性T細胞クローンによる抗DNA抗体産生誘導能は特異的なものであることが確認された.次にこの病原性T細胞クローンのTCRβ鎖のDNA塩基配列を解析した.このT細胞クローンはVβ4を使用しており,標的ペプチドが結合するCDR3領域のアミノ酸が100番目にアスパラギン酸,105番目にグルタミン酸といった陰性荷電を有するアミノ酸が存在した.このことは,病原性自己抗原が陽性荷電を有する蛋白質(例えばDNAに結合しているヒストンなど)である可能性を示唆している.しかしながら,病原性を示さない自己反応性T細胞クローンも全く同じTCRβ遺伝子を使用していることがわかり,細胞移入の実験系における病原性発現のためにはTCRの特異性以外に他の因子が関与していることが推測された.この病原性TCRが認識する自己ペプチドの解析をするために,病原性T細胞クローンに対する刺激能を有しているAPC株からクラスII分子を精製し,その結合ペプチドをHPLCにて分離しアミノ酸配列を決定した.その結果,L-plastin 589-601(XMARKIGARVYALP)と2種の由来不明のペプチド(XATYXEQFTLFXYATE、XIMRXKIAHVVY)が同定された.また,微量であるが有意と思われるピークをプールしてアミノ酸シークエンスを行ない相対的な位置として1番目にIorF,6番目にMorForYという主要結合ペプチドモチーフを推定した.これはB/WF1マウスの自己抗原T細胞エピトープのモチーフと考えられる.
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