研究概要 |
環境要因の人体影響に遺伝的要因がどのように関与しているかの研究は、DNA損傷と、その結果としての突然変異及びがんについての解明が進みつつある。染色体異常は、それ自体量的に把握することのできる遺伝物質の変化であり、発がん機構とも関連が深い。そこで、本研究では、染色体異常を伴う先天異常があり、特異な免疫機能をもち、老化の早い遺伝性高発がん疾患群の患児集団より得た細胞、ならびに常染色体性遺伝様式(優性及び劣性)を有する神経皮膚症候群で、高発がん疾患群の患児より得た細胞を用いて、(1)環境因子曝露の影響を末梢リンパ球の染色体異常、姉妹染色分体交換(SCE)、細胞分裂能、遺伝子突然変異率等の遺伝影響と発がんに直接関連のある重要な変化を指標としてとらえる、(2)年齢及び遺伝要因との交絡について定量的検討を加える、(3)特異な免疫能の検討を行う。 本年度は、高発がん性遺伝病であるレックリングハウゼン病患者6名より得た神経センイ腫の病変部由来のものと同患者の正常部位由来のものの3cell lineを培養し、X線照射後のDNA修復能を不定期DNA合成(UDS)を指標として検討した。X線照射量を1〜4Gyとして、照射後のUDSを測定した。この結果では患部由来のcell lineも正常対照も、いづれもUDSはみられなかった。さらに照射量を上げ、10,20,30,40,〜100Gyと検討したが、10Gy以上ではcell lineのgrowth不良であった。今後、低線量での慢性照射の検討と、由来細胞宿主の年齢を加えた検討を行う予定である。また、同一の細胞株に紫外線30J/m^2を照射したところ、患部由来のcell lineでは、85%と若干低値を示した。 ダウン症児36例に対し、血清中の腫瘍マーカーの検討を行っているが、alpha-1 acid glycoproteinほかの2つのマーカーに有意高値を認めた。
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