初年度は、すでにわが国に数年にわたり滞在し、適応して生活していると考えられる留学生を対象として、彼らの食生活と健康面での適応要因をレトロスペクティブ(回顧的)に探り列挙し、現状までの実態を把握し、整理した。 予備的な面接調査を広く実施し、本年度の調査対象として、留学生実数が多く、わが国と文化的背景も近い韓国からの留学生をとり上げることとした。さらにその中でも、今後の増加が見込まれる大学院レベルの留学生について、学部レベルの留学生に見られる日本的食生活への適応プロセスとの差異を中心に検討した。 調査は質問紙法により、属性、身体状況、健康状態、および母国での食事と現在の食生活など63項目について、首都圏の大学等に在学する韓国からの留学生200名について実施した。 その結果、「留学生」として一括して語ることはできないほどに、大学院レベルの留学生は学部レベルの留学生と異なる生活パターンを示していることが明らかになった。大学院レベルでは年令が30.6歳と学部郡(25.5歳)にくらベ高く、既婚者と同居の割合も高いことなどが複合的に食生活にも影響している。そのため、外食は少なく、朝食も定期的に喫食しているなど、食パターンと生活にかなり安定感が見られる。 今回の結果は、一つの文化を共有している留学生であっても、日本の生活への適応にはかなりの幅と差異があることを示唆している。食事を規定する要因は多岐にわたるが、一般的には宗教的背景など母国の食文化・食慣行による食物摂取に関する禁忌など、わが国の食生活に適応する上での障害も大きい。さらに、多様な文化的背景をもつ留学生について多角的な調査を行なうとともに、留学生の出身国の食生活の実情についても幅広く調査をすすめる予定である。
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