研究概要 |
衝撃型振動は、定常振動に比べ手腕系の病変発症に、より有害に作用する可能性が指摘されているが、手腕系振動暴露に対する国際的な規約であるISO/DIS 5349では衝撃型振動に対する明確な基準を設けておらず、しかもその評価法についての見解も統一されていない。手腕振動系工具には、チェン・ソ-、ニューマチック・ハンマー、ニューマチック・リベッティング・ハンマー、ニューマチック・ネイラーの実際の産業職場での振動を記録し、これらをx方向の周波数重み付けRMS加速度(a_<xhw>)が一定(6.3m/s^2)になるよう波形を再生した。その結果、チェン・ソ-、ニューマチック・ハンマー、ニューマチック・リベッティング・ハンマー、ニューマチック・ネイラーの順に衝撃(crest factor,CF)が大きいことが認められた。衝撃波をほとんど含まないチェン・ソ-と、他の工具との主観的感覚の違いを調べた実験では、衝撃による有意な差を認めなかった。また、客観的指標である末梢循環動態への衝撃の影響を調べることを目的に、一定のa_<xhw>(6.3m/s^2)のもとでの衝撃型振動による指皮膚血流量への影響を調べた実験では、CFが0.5のニューマチック・ネイラーのときのみ、有意な低下が認められた。したがって、従来のISOの手腕系振動に対するRMS値による評価法以外にも、衝撃の大きさを評価することは重要であると考えられた。また、把持の影響を調べる実験では、把持による指皮膚値流量の低下への影響は大きく、衝撃の影響による直接的な影響よりも、衝撃による把持力の増加を通して、より振動が手腕系に伝達されることにより、末梢循環障害につながることも大いに考えられるため、この点を考慮した防振に対する工具の改良が今後、さらに必要と考えられる。
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