研究概要 |
日本白色家兎(雌、20週齢)を用い、採尿ケージにて一定の温度、湿度、飼料、水の条件下に2週間飼育した後、脛骨内側前面の中央部にトレフィンバーにて2.4mm径の円筒径の皮質骨から骨髄に達する骨のくり貫き手術を行った。術前には全蓄尿の一部採取を毎日行い、手術前1時間前には動脈血採取を全例に行った。手術後はストレス群と非ストレス群に分け、ストレス群はさらに(1)1日6時間の運動負荷の減少と拘束性ストレスを与えた群(拘束ストレス群)、(2)毎日1時間の直流の電撃性疼痛性ストレスを与えた群(疼痛ストレス群)、(3)レジン充填による外耳道閉鎖と終日の昼日化と1日10分間の顔面への空気吹きかけを与えた群(精神的ストレス群)にそれぞれ分けた。各群については術後1日、3日、7日、14日、30日、60日、120日、180日でそれぞれ各3匹づつ屠殺し、手術部位の骨採取、手術側と非手術側の脛骨、大腿骨の採取をそれぞれ行い、併せて腎臓、胃、十二指腸の採取を行った。なお、採尿と動脈血採取は手術後の1週間以内については毎日、それ以後は1週間毎に経時的に行った。 コントロール群とストレス群では、手術部位の治癒過程を実体顕微鏡と光学顕微鏡による形態学的観察を行った結果、疼痛ストレス群ではコントロール群に比較して骨治癒に明かな遅延がみられ、長期群(60日以上)では骨皮質と海綿骨で共に骨添加能、骨形成能などが低下していることが観察できた。拘束ストレス群ではコントロール群に比較して,早期(7日)には,欠損部の治癒過程(類骨,化骨の形成)に遅延がみられ,中期(60日)には正常骨組織の形成の遅延が認められた。精神的ストレス群では,コントロール群に比較して早期,中期での内骨膜の再生や骨芽細胞の増殖において若干の低下傾向がみられたが,疼痛ストレス群や拘束ストレス群に比較するとその程度は極軽度であり、顕著な骨形成の遅延はみられなかった。 尿と動脈血の分析結果では,動脈血において,疼痛ストレス群はコントロール群に比較してカテコミラン(Ad、Nor-Ad、Do)の増加がみられたが、長期群の一部の家兎では刺激に対する耐性が認められた。拘束ストレス群では術後早期にはコントロール群に比較してAd,Nor-Adの増加をまたが,中長期的には刺激に対する耐性がみられた。精神的ストレス群は,術後早期,中長期のいずれについても,カテコラミンの増加はみられなかった。以上の結果については,平成5年10月の日本公衆衛生学会に1題発表し,平成6年4月の衛生学会に2題発表の予定となっている。なお,平成6年度には関連学会にも発表を予定している。 現在,このような変化について,電顕と内分泌的にそのメカニズムについて分析,検討を進めている。
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