癌体質を診断するモデルとして、癌抑制遺伝子であるRB遺伝子のプロモーター領域の異常を検出することが有用であることを報告してきたが、本年度は更にRB遺伝子のプロモーター構造を解析した結果、サイレンサー部位を見出すことができた。私達が以前報告したように、RBF-1と名付けられた転写因子の結合する部位とそれに隣接するATF結合塩基配列に点突然変異が存在すると癌体質になることが知られている。今回、そのATF部位の下流に隣接しているE2F部位の作用を検討した。その結果、このE2F部位に点突然変異を入れ、E2Fタンパクが結合できなくなると、全体のRB遺伝子プロモーター活性が2-5倍に上昇することが明らかとなった。これはこのE2F部位が興味深いことにサイレンサーとして機能していることを示している。したがって、可能性として、仮にこの部位に点突然変異が存在する家系が存在した場合、逆に癌に罹患しにくい家系になるのかもしれないが、それは今後の研究を待たなくてはならない(このデータはOncogeneに印刷中)。また、網膜芽細胞腫の患者由来のDNAを更に検討した結果、日本の症例においても、一例腫瘍由来のDNAにRB遺伝子プロモーター領域の過剰メチル化が見られた。更に、肝臓癌由来のDNAを検討したところ、一例にRB遺伝子プロモーター領域の過剰メチル化が見出された。これにより、当初予想したようにRB遺伝子のプロモーター領域の異常は網膜芽細胞腫だけでなく他のより一般的な悪性腫瘍においても存在し、かつそれが発癌に関与している可能性が示唆された。
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