研究概要 |
(1).マウス肝180gからacidecADH(ClassIII)およびbasicADH(ClassI)をそれぞれ14.5および12.6mg精製し、それらの酵素標品がいずれもSDS電気泳動並びに免疫学的に均一であることを確認した。また得られた各ADHに対する抗体はそれぞれに特異的であった。 (2).各種疎水物質(t-butanol,trifluroethanol,TCA,Phe,NLeu,acetamide,butyramide,caprylamide,lauramide,stearamide)の両ADH活性に及ぼす影響を急性中毒時の血中アルコール濃度に相当する100mM ethanolを基質として検討した。これらの疎水物質はいずれもacidicADHの活性を15〜560%増大させ、一方basicADHの活性を逆に10〜100%抑制した。各ADH活性の増大または抑制効果は、用いた疎水物質の中でt-butanolが最大であった。また、両ADHに最大の活性変化を起こさせる各疎水物質の濃度は用いた酵素濃度に比ベ化学量論的に10^4〜10^6倍と著しく高かった。酵素反応の動力学的パラメータの検討により、疎水物質によるacidicADHの活性化は、Vmaxの低下にも拘らず、それを凌駕するKmの著しい低下(例えば、acidicADHは本来ethanolに対し約5000mMと極めて高いKmを示すが、1.8Mt-butanol存在下では150mMまで低下する)によるものであることが示された。一方basicADHの疎水物質による活性低下は、Vmaxの低下のみが直接活性に反映する非拮抗阻害タイプであった。これらの結果から、両ADHは細胞内の疎水状態によって活性が相反的に制御され、アルコールの代謝調節に重要な役割を担っていることが示唆された。 (3).小動物であるマウスから経時的に採血して血中アルコール消失速度を測定することは、操作の繁雑さのみならず、循環血液量の有為な減少という生理的な重要問題が存在する。そこで我々はメンブランプローブを皮下に挿入固定し、体内アルコールを経時的に回収できるマイクロダイアリシス法をアルコール代謝速度測定に適用し、良好な結果を得た。
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