慢性関節リウマチ発症におけるヒトパルボウイルスB19の役割に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454232
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 佐々木 毅 東北大学, 医学部, 教授 (50110656)
• 研究分担者: 遠藤 一靖 東北大学, 医学部, 講師 (60125507) ; 菅村 和夫 東北大学, 医学部, 教授 (20117360)
• キーワード: 慢性関節リウマチ / ヒトパルボウイルスB19 / 持続感染

研究概要

(i) HPV/B19感染成人の急性期血清からHPV/B19 DNAを精製し、常法に従ってHPV/B19 DNAを抽出した。このDNAを用い、PCR法を用いてVP-1遺伝子を増幅し、単離した。このVP-1遺伝子をGST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)発現ベクターに結合し大腸菌にてVP-1-GST融合蛋白質を発現させた。これよりHPV/B19 VP-1リコンビナント抗原を精製し、ELISA法によりヒト血清中の抗HPV/B19 IgM及びIgG抗体を測定した。これより抗B19 IgM及びIgG抗体測定法が確立したとみなされた。
(ii)B19感染による急性多発性関節炎後にRA様症状を発現し、臨床的にも血清学的にも典型的RA状態に移行する例が存在することを示告した。更にこれらの例では、骨髄血でB19 DNAが証明でき、B19抗原に対し、T細胞が高反応性であった。これより、B19ウイルスがRA例の病態発現に関与する可能性が示された。更に、成人においてB19が持続感染しうるのか、持続感染は、特定の疾患(RA)に限定して成立するのか、更には、その潜伏部位について検討を行った。その結果、現在検索しえた範囲内ではRA例に限局してB19 DNAが検出できることを認めた。B19感染のターゲットは末梢血及び骨髄細胞であることが判明した。更に滑膜細胞も潜伏感染部位である可能性を示した。B19感染とRA発症との関連については今後の更なる検索が必要であるが、本研究によりB19感染の役割の重要性が明らかとされた。

研究成果

• [文献書誌] T.Ohteki,T.Sasaki: "Age-associated increase of CD5+ B cells in the liver of autoimmune NZB/WZ1 mice." Microbiol.Immunol.37. 221-228 (1993)
• [文献書誌] Y.Hirabayashi: "Human B cell clones expressing lupus nephritis-associated anti-DNA idiotypes are prefentially expanded without automatic mutation." Scand.J.Immunol.37. 533-540 (1993)
• [文献書誌] T.Ishii,T.Sasaki: "Systemic amyloidosis in a patient with adult onset Still's disease." Jap.J.Int.Med.32. 50-52 (1993)
• [文献書誌] H.Fillit,T.Sasaki: "Autoantibodies to the protein core of vascular basement membrane heparan sulfate proteoglycan in systemic lupus erythematosus." Autoimmunity. 3. 243-249 (1993)
• [文献書誌] S,Shibata,T.Sasaki: "Autoantibodies to heparan sulfate in systemic lupus erythmatosus react with endothelial cells and inhibit the formation of thrombin-antithrombin III complexes." Clin.Immunol.Immunopath. (in press). (1993)
• [文献書誌] N.Yaegashi,K.Sugamura.: "The frequency of human parvovious B19 infection in nonimmune hydrops fetalis." J.Perinatal.Med.(in press). (1994)