遺伝病の病因遺伝子座を連鎖解析により決定する研究が欧米では盛んに行なわれている。我々は遺伝性腎不全を来たし、早期に痛風を発症する疾患(常染色体性優性腎性痛風)の遺伝子座を確定することを目的に研究を行なった。サンプルを収集した後、PCR-SSCP法と銀染色を用い遺伝子多型を検出するシステムを作った。本方法は多数のサンプルを大量に処理することができること、アイソトープを必要としないことなどの利点がある。また、至適条件でPCRを行なうため塩基配列の中から最適のプライマーの組み合わせを計算するコンピュータープログラム(BEST PCRv2.4.2、ソースコード643行)を作成した。このプログラムによりプライマーの選択が効率的に可能となった。現在までこのプログラムを用いて多数のプライマーを合成し、PCRを行なったところ全例鮮明な増幅が見られた。常染色体性優性腎性痛風の遺伝子座については、現在までにいくつか、この病因遺伝子座として高い確率で除外できる染色体部位が見いだされたが、疾患遺伝子座を確定するには到っていない。この研究の過程で日本人の病因遺伝子にはコーカソイドと異なった性格があり、連鎖による遺伝子座確定のためにはコーカソイドの場合にはない困難さが伴う事が予想された。モンテ-カルロ法によって病因遺伝子の、集団内での推移をシミュレートするプログラム(Evolv5.1、ソースコード843行)、結果を分析するプログラム(Analydata v5.1、ソースコード1013行)を作成し検討した。その結果、日本人の場合はコーカソイドのように連鎖不平衡があまり強くない可能性があることがわかった。もしそうだとすると、一般的に遺伝病の遺伝子と近傍の多型部位を異なった家系で現討するというコーカソイドの遺伝病で用いられた方法が日本人の場合は有効でない可能性がある。
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