研究課題/領域番号 |
04454244
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川野 淳 大阪大学, 医学部, 助手 (60133138)
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研究分担者 |
林 暢彦 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
竹井 謙之 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
辻 晋吾 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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キーワード | 肝移植 / クッパー細胞 / 内皮細胞 / 伊東細胞 / TNF / アポトーシス / エンドセリン-1 / 一酸化窒素 |
研究概要 |
1)購入したエルトリエータを用い、ラット肝のクッパー細胞、内皮細胞、伊東細胞を分離培養する技術を確立した。いずれの細胞も純度90%以上であり、初代培養に成功した。このことにより、安定した状態で類洞壁細胞の機能評価を行うことが可能となり、以下2)3)の研究成果を達成するために大きく貢献した。 2)グラフト冷保存・肝移植に際してクッパー細胞が保存時間に比例して活性化されることを明らかにし、活性化クッパー細胞はTNFを過剰産生することによりグラフト障害を惹起することを証明した。これにより、抗TNF抗体投与により移植後の肝障害発生を抑制する方策が可能となった。さらに培養類洞細胞を用いた詳細な検討を行い、活性化クッパー細胞がパラクライン・ジャクスタクライン機構により内皮細胞やクッパー細胞それ自身にアポトーシスを惹起することを明らかにすることができた。この機序には活性化クッパー細胞から産生されるTNF等のサイトカインが関与しており、その遺伝子発現を特異的に抑制するアンチセンスオリゴDNAを添加することによりアポトーシスを回避することが可能であった。今後は他のサイトカイン、特に最近クローニングされたFas ligand等の関与についても検討を行い、アンチセンス法によるクッパー細胞機能のより精密なモデュレーションを行っていく予定である。 2)虚血再潅流・肝移植において微小循環障害が惹起されるが、その成因について類洞細胞の関与の面から検討した。まずアルコール存在下で惹起される録洞収縮は相反する作用を持つ血管作働性物質エンドセリンと一酸化窒素nitric oxideのバランスによって調節されることを見いだした。さらに内皮細胞がエンドセリンを産生すること、エンドセリンが生体肝の類洞を収縮させ、酸素供給を低下させることによって肝障害を惹起する機序を証明した。以上の成績は、肝は血流の調節機構を欠くという従来の定説を覆す知見である。続いて、虚血再潅流・移植モデルで、再潅流後に類洞の収縮が出現し、上肝下大静脈血エンドセリンが上昇することを示した。抗エンドセリン抗体投与により、類洞の血液量は増加し、肝傷害も軽減した。抗エンドセリン療法がグラフトの生着を改善する手段として有用であることを示唆する成績である。
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