1、正常SDラット、先天黄疸ラット(エーザイ・ビリルビン尿ラット・EHBR)を用いて、細胆管側肝細胞膜ベジクル(CMV)を分離精製した。CMVは、細胆管側肝細胞膜に存在するMg-ATPase、alkaline phoshataseの活性が高く保持され、高純度であった。〔^3H〕標識ビリルビンジクルクロニド(BDG)は標識ΔALAを投与したラット胆汁より精製した。 2、SDラット、EHBRのCMVを用いて〔^3H〕BDGと、〔^3H〕タウロコール酸(TC)の摂取観察を行い比較した。SDラットでは、〔^3H〕TCのATP依存性輸送が観察され、これは、EHBRのCMVでも正常に保持されていた。一方、〔^3H〕BDGの輸送は、他の有機陰イオンの輸送とは異なり、ATP依存性は明らかでなく、重炭酸イオンに依存して輸送が亢進した。この〔^3H〕BDG輸送は、EHBRのCMVでも正常に観察された。 3、有機陰イオンのモデルである〔^<14>C〕プラバスタチン(PS)がSDラットの胆汁中には排泄されるが、EHBR胆汁中には排泄がきわめて遅延することを我々は見出した。このプラバスタチン(PS)を用いてSDラット、EHBRのCMVへの摂取を観察し比較した。〔^<14>C〕PSはSDラットの細胆管側肝細胞膜をATP依存性に一次性能動輸送される事が証明された。EHBRのCMVを用いた観察でも、このATP依存性のPS輸送は認められSDラットCMVと差を認めなかった。 4、以上から、黄疸ラットにおいて、細胆管膜における欠損が指摘されているATP依存性の有機陰イオン移送機構の存在は確認できず、黄疸発症要因について、更に検討が必要となる事が明らかとなった。特にEHBRにおいて観察されたATP依存性の細胆管膜輸送は、従来の世界における報告と対立しており、新種の輸送機構の発見である可能性がある。
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