研究概要 |
HTLV-I感染と呼吸器疾患との関係を明らかにするためにHTLV-Iのprovirusの量とHTLV-Iの各種mRNA(gag/pol,env,tax/rex)の発現を抗体陽性者34例(HTLV-I associated myelopathy(HAM)6名,adult T-cell leukemia(ATL)4名,呼吸器疾患を伴うcarrier24例)の末梢血単核球および肺胞洗浄液細胞を検体として検討した。検討に用いた方法はprovirusの量を半定量的polymerase chain reaction(PCR)、各種mRNAの発現をreversetranscriptase-PCR(RT-PCR)を用いた。provirusについては今までの報告と同様にHAMおよびATLの末梢血では増加が認められたが、HAMおよび呼吸器疾患を伴うcarrierの肺胞洗浄液にprovirusの増加はなくprovirus自体と呼吸器疾患との関連はは明らかではなかった。mRNAの発現ではgag/pol,env mRNAはいづれの症例も検出できなかった。これに比べてtax/rex mRANはHAMで全症例の末梢血および肺胞洗浄液に発現を認め、carrierの半数に肺胞洗浄液で発現をみとめた。このmRNAの発現を認めたHAMおよびcarrierの肺胞洗浄液では発現のない症例と比較して有意に活性化リンパ球(IL-2receptor陽性細胞)が増加していることが確認された。つまり、in vitroで報告されているtax proteinによるhost gene(IL-2,IL-2 receptor,etc)のtransactivateのことを考えると、in vivoでは一部の症例でウイルスの複製とは直接関係なくウイルスRNA(tax/rex mRNA)の発現があり、この発現により免疫系が賦活化され、局所での炎症を引き起こしていることが示唆された。しかし、tax/rex mRNAの発現を認める症例の臨床的特徴は現在のところ明らかでない。
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