研究概要 |
本年度はARDSの肺水腫の早期発見法を動物(犬)実験で行う基礎実験として,動物肺における光散乱法の測定法を確立することを目標とした.肺胸膜にレーザー光を入射し,散乱光を測定するデバイスの作成を行った.これは肺の呼吸運動にともない肺胸膜面が,上下動物をするので,デバイスは小型軽量化したもの考案した.動物では全身麻酔下で人工呼吸を行い,開胸し,肺胸膜を広く露出する手術法を確立した.これにより,長時間のin vivoにおける静的な肺活量の変化時および小さな換気運動時の肺胞表面積比の連続測定が可能となった. ビーグル犬を用い,静的な大換気(肺活量)時の肺胞表面積比(S/V)を測定した.その結果,吸気時のS/V比は呼気時より小さく,吸気時には肺胞表面張力が肺胞道の組織張力より大きいことを意味する.これまで間接的にしか知られていなかった現象がin vivoで実証された.また,高肺気量では,肺胞径は肺気量の1/3乗に比例しないと言われている.S/V比の逆数(λ)は平均肺胞径に相当するが,λが全肺気量にわたって肺気量の1/3乗に比例すること初めて示した.換気運動では20回/分の呼吸ではS/V比が大肺気量変化時と同じく吸気時が小さいものが半数(A群),反対に吸気時のS/V比が呼気時より大きいものが半数(B群)みられた.換気数が40回/分,60回/分と増えるにつれ,A群ではS/V比は呼気吸気の差が小さくなり,B群では吸気時のS/V比は大きくなり,呼気吸気の差が大きくなった.この現象は,吸気時の肺胞表面張力が換気数が増加すると,組織張力の変化より小さくなることを意味している. また,肺胞を生理食塩水で洗浄すると,S/V比は同一肺気量でみると,減少していた.これは,肺胞表面張力の減少を意味する. 以上のように,本年度に予定した研究は目標通り完遂出来た.
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