平成4年度には、開胸した人工呼吸管理下の犬の肺胸膜面を露出し、胸膜の面に光ファイーでレーザー光を照射し、散乱光の強度を測定することにより、肺胞表面積(S/Vtc)を求める方式を確立した。本年度は、その方法を用い、肺胞表面積を変化させる実験を行った。 生理食塩水による肺胞洗浄で、肺胞表面張力を低下させた実験では、肺圧量曲線が右下方へシフトし、コンプライアンスの低下が認められた。同時に測定した光散乱法によるS/V比は低下し、光学的平均肺胞隔壁間距離lambdaは増加した。これは肺胞表面張力が増加したことを意味する。肺胞洗浄によって肺胞表面活性物質を減少させると、肺胞微細構造が変化することをin vivoで初めて証明した。15EA03:オイレン酸の静脈内投与を行い、肺血管の透過性亢進をさせ、permeability edemaの肺水腫の実験モデル動物を作成した。オレイン酸0.04mg/kgの静注で湿/乾燥重量比は約40%増加し、肺圧量曲線は右下方へシフトした。光散乱法によるS/V比は各肺気量で20〜35%低下した。また、このpermeability edemaのsaline-filled肺圧量曲線を正常肺のそれと比較すると、高肺気量を除いて差が見られなかった。これらのことは、オレイン酸肺水腫では、高肺気量位以外では肺胞表面張力の増加によって、肺圧量曲線がよりstiffな方向へ変化したことを意味する。すなわち、オレイン酸により肺血管から肺間質へ水分の移動があり、これが肺胞表面活性物質の活性を低下させ、肺胞表面張力を増加させたものと考えられる。このように、permeability edemaにおいてin vivoで肺胞表面張力の増加をはじめて直接観察できた。羊を用いて検討を行っているが、いくつかの技術的問題があり、まだ実験が完成してない。 以上のように、予定した実験はほぼ施行できた。
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