研究概要 |
筋緊張性ジストロフィー症(以下DM)は以下の点で非常に興味ある疾患である。(1)遺伝性早老症の一つに分類され、白内障、前頭部禿頭、性腺機能低下、痴呆などの老化現象を示すことから、老化のメカニズム解明の糸口になりうる。(2)多組織性優性遺伝病のモデルとなる。(3)病気の重症度や発病年齢の幅が広い。(4)女性遺伝からくる先天性DM発生の問題。(5)世代を経る毎にDM患者の症状が重症化する表現促進現象(anticipation)がみられる。 1992年初めに欧米のグループによってDMの原因となる不安定DNA配列が単離同定され、DM患者では(CTG)リピートが異常に長い事が判明した。これを契機として、上記病態の解明が期待されている。 本研究では、日本人における(CTG)リピート数の分布、父性遺伝と母性遺伝における(CTG)増大の比較、さらに、多型性DNAマーカーを使ったハプロタイプ分析による創始者効果の検討を行った。 その結果は以下の通りである。 (A)正常人は、5〜35回リピートをもち、13回のくり返しが最多、患者は例外なく50回〜3,000回と長かった。 (B)全体として母性遺伝の方が父性遺伝より(CTG)リピートの増大が大きい傾向がみられたが個々については例外もあった。 (C)日本人の異常染色体のパプロタイプは1つであり、DMにおける創始者染色体が想定された。
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