クロイツフェルト・ヤコブ病(以下CJDと略)感染マウスにおいて、中枢神経系以外の臓器のうちリンパ系臓器において、濾胞中心に存在する濾胞樹状細胞(以下FDCと略)に異常プリオンが蓄積することを証明した。本年度は、まずFDCへの異常プリオン蛋白の蓄積がどのような時期から検出されるのかを検討した。この結果、感染因子の脳内投与、腹腔内投与に関係なく、リンパ節や脾臓のFDCは1ヶ月以内に陽性所見を呈して、中枢神経系より早期に異常プリオン蛋白を検出できることを明らかとした。一方、胸線のFDC染色は、リンパ節や脾臓とことなり、病末期に濾胞が出現し、FDC染色陽性となることを示した。 次に、免疲不全マウスの1つとしてSCIDマウスが、脳内投与でも、腹腔内投与でも、異常プリオン蛋白の蓄積がFDCにみられず、腹腔内投与では発症もしないという報告をしたが、今年度はSCIDマウスを用いてプリオン蛋白のmRNAの検出を行った。SCIDマウスとNZWマウスの肝、腎、脾、睾丸、リンパ節、胸腺、心臓、脳を用いてRNAを抽出し、RT-PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)法にてプリオン蛋白mRNAを増幅後、サザンブロット法にて確認した。SCIDマウス、NZWマウスとも検索した全ての臓器で、プリオン蛋白のmRNAの検出が可能であった。これにより、SCIDマウスでのFDCに異常プリオン蛋白が蓄積されない理由としてmRNA発現の有無は否定された。 最後に、ヒト異常プリオン蛋白を脳内に接種したNZWマウスとマウス異常プリオン蛋白を脳内接種したNZWマウスにて、FDCへの蓄積を検討した。ヒト異常プリオン蛋白脳内接種では、マウスの脳にマウス異常プリオン蛋白を沈着させることができるが、FDCには沈着させない。一方マウス異常プリオン蛋白では、脳内とFDC両者に沈着した。FDCは種間バリヤーを規制する因子である。
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