研究課題/領域番号 |
04454265
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 裕 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (20127252)
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研究分担者 |
尾崎 仁 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
松村 泰志 大阪大学, 医学部附属病院, 助手
佐藤 秀幸 大阪大学, 医学部, 助手 (70167435)
井上 通敏 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (30028401)
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キーワード | 慢性心筋不全 / 運動 / 交感神経活動 / 心筋応答 / 遷延性左室拡張機能障害 |
研究概要 |
慢性心不全患者のquality of lifeおよび生命予後を改善するためには、心不全の進行を予測し、早期に抑制することが重要であるが、その予測指標は未だ明かにされていない。申請者らは従来の研究で、慢性心不全患者においては、運動中の拡張期左室圧-容積曲線が上方へシフトし、このシフトがβ遮断薬の前処置により抑制されることを明らかにし、労作時の過剰な交感神経刺激が不全心筋の代謝に悪影響を及ぼす可能性を示した。したがって、労作に対する不全心筋の代謝応答あるいは脆弱性を、臨床的かつ非観血的に評価できれば、心筋不全の進行を予測する上で有力な指標になり得ると考えられる。平成4年度では、慢性心不全患者において単回労作が遷延性の左室拡張機能障害をもたらすか否かを検討した。冠動脈に有意狭窄のない拡張型心筋症患者10例と正常対照群5名を対象に、症候限界ランプ自転車負荷試験を行ない、負荷前および負荷後1時間、3時間、5時間、1日、3日、7日の7時点で、心拍数および収縮期血圧を測定した。同時に心エコー・ドプラー検査を施行し、駆出機能の指標として左室内径短縮率を、拡張期機能の指標として左室流入血流速パターンから心房収縮期と急速流入期の最大血流速の比(A/E)を求めた。その結果、拡張型心筋症群では、心拍数、収縮期血圧および左室内径短縮率は運動前後で変化を認めなかったが、A/Eは負荷後1時間から有意な上昇を認め、前値に復したのは3日後であった。正常対象群では、すべての指標に有意な変化を認めなかった。以上より、単回の運動は、ほぼ3日間にわたって拡張型心筋症の左室拡張機能を低下させることが示された。すなわち、不全心に対する運動の悪影響は遷延し、その蓄積が心不全を悪化させる可能性が示された。今後は、この遷延性左室拡張機能障害におよぼす交感神経系の関与を解明し、その障害の程度が心筋不全進行の予測指標となるか否かについて検討する予定である。
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