研究概要 |
1. EDRFの産生及び放出に対するリゾリン脂質及び修飾リポ蛋和質の影響 ー 我々は、動脈硬化の一因とされる酸化LDL,および酸化の過程で増加したリゾホスファチジルコリン(LPC)が、EDRFを介する血管拡張反応を抑制することを見出した。さらに酸化LDL、およびLPCはともに、ウシ大動脈培養内皮細胞において、受容体刺激によるPI代謝回転、並びに細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を濃度依存性に抑制した。この受容体を介する情報伝達機構を抑制することが酸化LDLおよびLPCによるEDRFの産生抑制の機序の一つであることを明らかにした。また、酸化LDL並びにLPCによるEDRF産生の抑制は高比重リポ蛋白質(HDL)により減弱することを見出した。HDLは酸化LDL中のLPCの内皮細胞への移行を減少させること、さらに移行したLPCを引き抜くことにより、その作用を示すことを明らかにした。 2. 内皮細胞NO合成酵素(NOS)の精製とその活性調節機構 ー ウシ大動脈培養内皮細胞(BAEC)より、NOSを単離、精製した。BAECのconstitutiveNOSは膜画分に存在し、その分子量はSDS-PAGE上で、13,500であった。その活性はCa^<2+>/カルモジュリンによって調節されており、co-factorとしてNADPH,FAD,BH_4が必要であった。現在試験管内で、細胞膜に存在するリン脂質による活性調節について検討中である。さらにBAECを用いて細胞レベルにおけるNOの産生調節機構を調べた。NO産生量は化学発光法を用いて測定した。Protein kinase C (PKC)の活性化物質であるTPAは濃度依存性に受容体刺激によるNO産生のみならず、A23187によるNO産生をも抑制した。一方、dibutylic cyclic AMP及び、8-bromocyclic GMPはNO産生に影響を与えなかった。これらの結果から、内皮細胞におけるNO産生は細胞内Ca^+濃度やPKCなどのセカンドメッセンジャーによって制御されていることが明かとなった。
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