研究概要 |
ノルウオークウイルス(NV)は食中毒様急性胃腸炎の主要起因ウイルスであるが、組織培養による増殖系が確立されていないため適当な検出法がなく、日本でのNV感染症に関する報告は殆どなかった。最近米国でNVに対するcDNAが作成され、様々な検出方法が可能となってきている。本研究では下記の様なNV検出法を確立し、種々の検討を行った。 Dot blot hybridization:SP6,T7 RNA promoterを持つvecterに組込みこんだNV cDNAのcapsid proteinをcodeする部分から、SP6及びT7 polymeraseによるtranscription反応により、NV geneに対するsense,antiーsense RNA probeを作成した。 ELISA and ELISAーBL:Baculovirusに発現させたrecombinant NV capsid proteinを免疫して得られたモルモットおよびウサギの抗血清を用いたELISA法でNV抗原検出系を、またrecombinant NV particleを抗原としたBlockingーELISA法でNVに対する抗体検出系を確立した。 Dot blot法でヒト及びネコカリシウイルス、音更因子関連ウイルスについて検討したが陰性であり、NVとの遺伝子学的関連性は低いことが示唆された。Dot blot法及びELISA法での日本の乳幼児期のSRSV胃腸炎糞便検体からのNV検出率は非常に低率であった。北海道における年令別のNVに対する抗体保有率は乳幼児期では低く、学童期から上昇し、成人では高い保有率であった。日本の5道府県の健康成人では地域差なく高い保有率であった。以上より日本においてNVは普遍的な感染因子であるが、乳幼児期ではその関与は低いことが示唆された。今後はさらにPCR法によるNVの検出とその産物のシークエンスによる解析を進める予定である。
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