研究概要 |
表皮にホーミングするT細胞については主にマウスを用いて研究され、専らV_γ5^+胎仔胸腺細胞のみがその能力を有しているとみなされてきた。しかし我々は骨髄細胞や胸腺細胞(adult)も表皮に遊走することを示した。但し、通常のV_γ5^+dendritic epdermal cell(dEC)と異りTCR-αβ^+,CD8^+であった。このような表皮へのホーミングにTCRが関与していることを明らかにするためRT-PCR法を用いて表皮に遊走してくる骨髄、胸腺由来dECのTCRレパートリーを決定しようと試みたが成功しなかった。 そこでこれにかわる手段として、皮膚疾患の病変部表皮に存在するT細胞に注目し、これを解析することとした。固定薬疹は薬剤摂取の度に一定の部位の表皮に傷害を認めるが、この傷害に病変部表皮に長期間残存するT細胞の関与が推察されている。そこでこの表皮T細胞の機能、TCRレパートリー、細胞接着分子について検討した。これらの細胞の反応性は何らかの自己抗学に向けられており、TCRそ斤する刺激によりケラチノサイトを傷害することがわかった。RT-PCR法を用いてTCR V_α-V_β遺伝子レパートリーを検討したところ、表皮T細胞はPBLと比べ著明な偏りが認められた。しかも薬疹歴の長い症例程、この偏りが著明で、炎症をくり返すうちに次第にレパートリーが限局化されていく可能性が示唆された。このことは少くとも固定薬疹病変部に認められるT細胞が表皮に最初に遊走する過程にはTCR V_αV_β特異性はあまり関係なく、むしろその場(表皮)においてあるT細胞が選択的に増殖する結果、レパートリーの偏りとして認められるようになると考えられた。これらの表皮T細胞はいずれもLFA-1,CLA(cutaneous lymphocyte antigen)を強く発現しており、TCR特異性よりこれらの細胞接着分子の強い発現がT細胞の表皮へのホーミングに重要と思われた。
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