研究概要 |
平成4年度では、パーフルオロケミカル(PFC)の放射線増感剤としての効果を、リンの磁気共鳴スペクトロスコピー(^<31>P-MRS)で検討した。SCCVII移植マウスを15Gy照射群、酸素吸入下で照射の酸素群、PFC投与後酸素吸入下で照射のPFC群に分け、^<31>P-MRスペクトルから、その優れた有効性を報告した。また、PFCなどの他の放射線増感剤、抗癌剤、放射線、温熱療法の効果の評価に対し、^<31>P-MRSのパラメーターとしてクレアチンリン酸/無機リンの比(PCr/Pi)が最適であることを提唱できた。 平成5年度は、フッ素化合物としてのPFCの肝臓・脾臓など網内系および腫瘍組織のマクロファージへの取り込みを利用して、^<19>F-MRSによりPFCの肝臓・腫瘍での代謝を、^<19>F-MRIにより肝臓・腫瘍のイメージングを検討した。 ^<19>F-MRSスペクトルはGSX400MRS(9.4T:JEOL)で測定した。生体検出用のサーフェイスプローブではFDAの10^3(0.02%)希釈まで検出可能であり、PFC濃度と各ピーク面積とは非常に高い相関を示し、優れた定量性が示された。下肢にSCCVII腫瘍を移植したマウスにPFCを40,20,10ml/Kg尾静脈より投与した結果、下肢腫瘍・肝臓共にほぼ投与量に比例した^<19>F-MRSのピークが得られた。下肢腫瘍の^<19>F-MRSのピークは、20,10ml/Kg投与マウスでは腫瘍の増大も伴って、2-3週後消失したが、40ml/Kg投与では生存期間中検出された。^<19>F-MRIは、CSI Omega2(4.7T:Bruker)で測定した。in vivo実験では、0.067%まで定量的にイメージングされた。担癌マウスでは、40ml/Kg PFC投与群で肝臓および下肢腫瘍がイメージング可能であった。【結論】^<19>F化合物のPFCは^<19>F-MRS,^<19>F-MRIで定量的に測定可能であり、肝臓・腫瘍のスペクトル、イメージングに有効な造影剤と思われた。特に、フッ素は生体内に殆ど存在しないことから、^1H-MRIとは異なりFDAを取り込んだ腫瘍のみがイメージングされた。また、^<19>F-MRIによる腫瘍造影の成功は、本助成による本研究が最初であり意義深い。しかし、更に感度を上げるため、^<19>F-MRI用コイル、測定法の検討が必要と思われた。
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