てんかん治療の向上のために、難治化に関わる神経機序を解明することが要請されている。本研究では、キンドリングモデルを用いて、各発作段階におけるけいれん準備性の持続を比較し、続いて、海馬歯状回における苔状線維の発芽の程度をTimm染色法により観察した。その後、けいれん準備性と発芽現象の程度との関連について検討を加えた。 左扁桃核を刺激部位とし、キンドリング有効刺激と無効刺激を設定し、それらを組み合わせることによって異なる発作段階、すなわち、発作を起こさなかったSO群、発作をStageの3の1回目で止めたF-S3群、発作をStage5の1回目で止めたF-S5群、Stage5を10回繰り返した10-S5群、Stage5を30回繰り返した30-S5群の5群を作成した。F-S3群、F-S5群、10-S5群については、50日間の刺激休止期間をおいて再刺激を行ない、発作段階後発射持続時間を測定した。その後、全群にTimm染色を行なった。 結果は次の通りであった。10-S5群では発作の後退はなく、F-S3群、F-S5群では発作が後退した。形態学的には全群で苔状線維の発芽が観察され、その程度は概ね、F-S3群=F-S5群<10-S5群<SO群<30-S5群であった。これらの結果から、二次性全般化を伴なう部分発作の難治性には全般発作の反復による獲得性のものが含まれ、早期治療によってその難治化を防ぎ得ることが確認され、また、その強固なけいれん準備性の持続の基盤となる形態学的変化ではないかと注目されている海馬歯状回の苔状線維の発芽についてはキンドリングにおけるけいれん準備性に対して機能的意味を持たないことが示された。今後は、海馬細胞脱落との関連を含め、神経発芽の病態生理学的役割について、さらに研究を進める予定である。
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