アミロイド前駆体蛋白の細胞内輸送処理システムに関する分子生物学的研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454304
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 深津 亮 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (10113614)
• 研究分担者: 藤井 充 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80199299) ; 高畑 直彦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20000987)
• キーワード: アルツハイマー病 / アミロイド前駆体蛋白 / アミロイド / モノクローナル抗体 / 細胞内輸送経路 / レーザー顕微鏡

研究概要

アルツハイマー病を特徴づけるアミロイドの形成機序を明らかにするために、アミロイド前駆体蛋白(APP)の細胞内輸送経路とその処理過程について以下の生化学的、免疫組織学的、分子生物学的方法を用いて検討を加えてきた。
1)モノクローナルの抗体の樹立;APPの各ドメインのうち新たにN末端、細胞内ドメインであるC末端に対するモノクローナル抗体(mcAb's)を樹立した。またβ蛋白9-25に対する多クローン抗体を作製した。これまでに樹立したmcAb'sとあわせてAPPドメインに対する抗体のパネルができた。
2)APPの細胞内輸送経路に関する生化学的検討;これまでにAPPの処理過程につき興味ある知見が得られているT細胞系、B細胞系、単球系の培養細胞を用いて遠心分離法、密度勾配遠心法により細胞分画を行った。高純度のER画分、Golgi画分、ライソゾーム画分(Ly)、細胞膜画分を得ることが出来た。この画分について上記のmcAb'sを用いてウエスタンブロットを行ってAPPの性質を調べた。細胞の種類によってAPPには相違があり、各分画に特徴的なAPPのバンドがありそうである。
3)APPの細胞内局在に関する免疫組織学的解析;上記のmcAb'sの他にGolgi、Lyに特異的な抗体を用いて免疫染色を行いレーザー顕徴鏡で観察して局在を調べた。GolgiやLyについては点状あるいは不定形の特徴ある局在が明らかにされた。APPに対する抗体では、現在までのところ細胞膜が染色され一部細胞内にも陽性構造が認められている。特異性についての検討を行っている。
4)APPのサブクローンの作製;APPあるいはAPPの断片を細胞内で過剰に発現させた場合の輸送経路と処理過程を調べるために、サブクローンの作製を試みてきた。PCRを用いてきたが当初DNAの増幅が見られなかった。DNAプローブを新たに作製して再度PCRで増幅を試みている。

研究成果

• [文献書誌] 高丸 勇司: "老人斑アミロイドに存在する80kDa抗原の解析" 北海道医学雑誌. 68. (1993)
• [文献書誌] Y.Takamaru: "Novel protein component of SPー40,40 exists in senile plaque amyloid." Neurobiol Aging. 13. S34-35 (1992)
• [文献書誌] R.Fukatsu: "Membranous lipodystrophy (NASUーHAKOLA DISEASE) with Alzheimer's senile change." Neurobiol Aging. 13. S24- (1992)
• [文献書誌] R.Fukatsu: "Alzheimer病へのモノクローナル抗体によるアプローチー原線維変化、老人斑の免疫病理を中心にー" 精神経誌. 91. 751-760 (1990)
• [文献書誌] R.Fukatsu: "Alzheimer病とモノクローナル抗体" 老年期痴呆研究会誌. 3. 1-8 (1989)
• [文献書誌] Y.Takamaru: "Monoclonal antibodies against paired helical filament in Alzheimer's disease and Parkinsonismーdementia complex of Guam.in Basic,Clinical,and Therapeutic Aspects of Alzheimer's and Parkinson's diseases;Vol 1" Plenum Press, 4 (1990)
• [文献書誌] Y.Aizawa: "Monoclonal antibodies against senile amyloid in Alzheimer's disease.in Basic,Clinical,and Therapeutic Aspects of Alzheimer's and Parkinson's diseases;Vol 1:59-63" Plenum Press, 5 (1990)