体重10-15kgのビ-グル犬6頭をdonorに、6-8kgの犬12頭をrecipientとして、donorの肝を各脈管を残したまま、左葉と右葉に分離し、冷温ラクテートリンゲル液で門脈から両葉をwash outした後、両葉を摘出し、直ちに我々が開発した細胞外液型の組織潅流液(TOM液)で冷温潅流、浸漬した。donor手術とほぼ同時に第1のrecipientの全肝を下大静脈を温存したまま摘出し、piggy bagg式にまずdonorの左葉を同所性に移植した。翌日、潅流24時間目に第2のrecipientの全肝を同様に摘出して移植した。肝のバイアビリティーを、スカラー社MDL1401組織血流計による肝の組織血流と、動脈血ケトン体とによって検討した。組織血流を肝右葉と左葉の2カ所で肝摘出前、移植直後、閉腹前に計測し、ケトン体比を移植直後、2時間後、12時間後に計測し、術後成績と比較した。 結果と結論 (1)左葉を移植した群:2例が36時間生存したが、他は24時間以内に死亡した。術後24時間以上生存した2例のrecipientはケトン体比が直後から1を越え、12時間後も1以上であったが、24時間以内で死亡した例は直後も、2時間後、12時間後のいずれも0.5以下であった。組織血流は肝摘出前で左葉が平均35ml/min、右葉が41ml/minであったが、生存例は移植直後も、閉腹前も摘出前に比較して10ml/min以上低下することはなかったが、24時間以内の死亡例は10ml/min低下した。 (2)右葉を移植した群(24時間保存)は全例、術直後に出血死した。primary graft non functionと思われた。この群の組織血流の変化はほぼ、左葉を移植した群と同様であったが、ケトン体比は、死亡した6頭中3頭に、直後、2時間後に2、0-2、6とむしろ異常高値を認めた。血糖値はいずれも、90mg/dlを越えていた。この実験から組織血流野測定はviabilityの指標になることが示唆されたが、ケトン体比の評価は、より実験を重ねて、長期生存群と短期死亡群の間で検討す必要があり、現段階では結論が得られなかった。
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