輸血後GVHDは免疫不全患者のみならず、免疫不全でない患者にも発症する。この原因はHLAホモ接合体(a/a)供血者からヘテロ接合体(a/b)受血者に輸血される場合に、a/bはa/aを自己と認識して拒絶しないために、a/aは生着して、a/bを非自己と認識して障害する。このような特異な組み合わせは、日本人が人種的に均一性が高いために、非血縁者間で約1/900、親子間で約1/100の頻度で生じる。しかし、現実の輸血後GVHDの報告症例頻度はこれより低い。診断されずに見逃されている症例があると推測される。マイクロサテライト遺伝子の繰り返し塩基配列の長さの違いによる多形性(DNA多形性)を指標にして輸血後GVHDの診断を検討した。患者自身のものであることが明らかな爪と移植片を含む血液の多形性を比較した。 A-Cバイパス手術後に典型的輸血後GVHD臨床症状を示した症例では、DNA多形性によりキメラを証明した。急性前骨髄球性白血病で、頻回輸血を受けて輸血後GVHDを疑わせる臨床症状を示した1症例では、紅斑の出現前後の検体のDNA多形性の違いは無かった。しかし、紅斑出現3ケ月前のHLAクラスI表現型はヘテロ接合体、紅斑出現後はホモ接合体であった。DNA多形性では差を検出できなかったのか、またはすでにキメラになっていた可能性がある。分娩後出血のために新鮮血600mlを輸血後、原因不明の高熱が出現し輸血後GVHDを疑われた。DNA多形性およびHLA分析で輸血後GVHDは否定されて、患者は軽快した。膀胱癌手術後に濃厚赤血球の輸血をうけて7日目に典型的急性輸血後GVHDの臨床症状を発症した症例の経時的DNA多形性検査で異状なく、HLA型もヘテロ接合体のままであった。その後患者は軽快した。薬剤アレルギーが疑われた。 DNA多形性検査は輸血後GVHDの診断に有力な手段である。
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