研究概要 |
1.異所性成人部分肝移植モデルにおける研究 子ブタを用いた50%部分肝移植モデルにおいてグラフトへの門脈血流及び肝組織ATPが移植後のグラフト機能に相関する事が判明した。肝細胞増殖因子に関しては、ブタ部分肝で作った増殖因子は力価が不安定で検討を重ねているもののこれまで適当なものは見つかっていない。今後、家兎などの別な動物の肝移植モデルなどで再検討が必要である。 2.抗接着分子抗体の作製と応用 我々は、フリーラジカルが、虚血再潅流およびエンドトキシンショックによる臓器障害において重要な役割を果たしていることを報告してきたが、今回、白血球とその接着分子のこれらの障害への関与について検討した。 部分肝虚血再潅流障害の防止:ウィスター系ラットを用い、90分間の70%部分肝虚血モデルを作製、虚血5分前に抗白血球接着分子抗体(mAb)である抗ICAM-1、CD11a、CD18抗体を静脈内投与した。再潅流後24時間まで肝内好中球数は増加し、再潅流後4時間において肝内ICAM-1の発現は増強した。mAb投与は、好中球浸潤、肝過酸化脂質生成を有意に抑制し、肝ATPを有意に改善した。90分の全肝虚血モデルにおいても、mAb投与はラット生存率を有意に改善した。 エンドトキシンショック:肝移植後にエンドトキシンショックを合併すれば致命的である。ICRマウスにエンドトキシン(LPS:30mg/kg)を腹腔内投与した。同時に、抗CD11a,CD11b,CD18,ICAM-1,LECAM-1抗体、メチルプレドニゾロン(MP)30mg/kgを静脈内投与した。LPS投与後48時間の生存率は対照群で36%であり、抗CD11a、CD18、LECAM-1抗体およびMP投与により生存率は70%,62%,64%および100%に改善した。肝過酸化脂質は、LPS投与後4時間で約5倍に増加し、抗CD18抗体およびMP投与により低下した。 白血球は、肝虚血再潅流およびエンドトキシンショックの肝障害形成に関与し、抗接着分子抗投与はこれらの病態下での肝障害予防薬となりうる可能性が示唆された。以上、これらの成績は、成人部分肝移植臨床に大いに役立つ知見である
|