研究概要 |
長期間に亘る胃癌切除後胆石症の臨床的検討の結果,性別では一般胆石症とは異なり女に比べ男に,胃切除術式別では胃亜全摘に比べ胃全摘に,胃再建術式別では食べ物が十二指腸を通る術式(以下十二指腸通過)に比べ十二指腸を通らない術式で多く発生した。発生頻度のピークは術後6年以内にあり、10年以後再増加した。これらのことより,胆石発生に及ぼす胃癌切除の影響は術後6年間位と考えられ,10年以後の増加は加齢など他の因子の影響が大きいと推定された。現在は本症の発生を防止すべく胃再建法は十二指腸通過を原則にし,早期胃癌に対してリンパ筋郭清の縮小を伴う迷走神経温存手術や幽門保存胃切除術(以下PPG)を採用している。これら術式の効果については今後共経過観察を行う。 胃癌切除後胆石症の発生原因を実験的に究明するため,外胆嚢瘻造設犬(外胆嚢瘻(+)群)を作成,対象群,胃切除群で胆嚢胆汁組成,細菌を1年間に亘り経時的に観察した。その結果,胆石形成には胆汁感染と共に胃切除の影響が大きいものと思われた。しかし,外胆嚢瘻由来の胆汁感染が否定できないので,外胆嚢瘻を造設しないモデル(外胆嚢瘻(-)群)で検討した。開腹下に初回手術時,6カ月,12カ月に胆嚢胆汁を採取,対象群と胃切除群(BillrothII法),さらに外胆嚢瘻(+)群との間で比較した。その結果,胃切除群6頭では細菌陽性は3頭,胆石は3頭(うち1頭は細菌陰性)に認められ,DCAは高く遊離型胆汁酸は全例に検出されたが外胆嚢瘻(+)群より低かった。対象群6頭では全例細菌陰性,胆石形成,DCAの上昇なく,遊離型胆汁酸は検出されなかった。以上より外胆嚢瘻(+)群とは異なり,胆汁感染よりむしろ胃切除の影響が大きい可能性が示唆された。今後はPPG,Billroth I法について検討する。
|