臨床的には第2群以上のリンパ節郭清を伴う胃癌治癒切除例(R_2胃切除)に対する長期間に亘る術後6カ月毎の定期的胆道超音波検査(US)により、胃癌切除後胆石症(胃切後胆石)の発生原因・頻度・時期に関する特徴がある程度明らかになった。そこでこれらのデータを基にして、1986年末より進行胃癌に対しては予防的胆嚢摘除を追加、その後早期胃癌に対してはリンパ節郭清の省略、胃・大網・小網切除範囲の縮小や迷走神経温存を伴ういわゆる縮小手術を行い、本症発生についてR_2胃切除と種々比較、検討した。現在までのところ予防的胆嚢摘除により本症の発生率は激減、縮小手術例には胃切後胆石の発生を認めていない。また、本症にて胆嚢摘除した時に得られた胆嚢胆汁と、R_2胃切除の胃癌切除時に採取した胆嚢胆汁とを比較し、本症の発生原因について胆汁組成の変化、胆汁感染の面より検討中である。胃切後胆石の手術例が増加し、より多くの胆嚢胆汁が得られれば、胆汁組成の変化がより明らかになり、内科的治療の可能性が生まれるものと思われる。また、臨床的には困難な胆嚢胆汁組成の経時的変化を知るため、イヌを用いて実験的に検討してきた。すなわち外胆嚢瘻(+)群として外胆嚢瘻造設のみの対照群、胃癌に準じた胃切除を追加した胃切除群(BI、BII)、6カ月毎の開腹時のみに胆汁を採取する外胆嚢瘻(-)群では対照群、胃切除群(BII)を作成、2群間で種々比較、検討した。特に平成5年度から外胆嚢瘻(-)群の胃切除群で、迷走神経および幽門輪を温存、胆嚢、胆道機能に優れ胆石発生が少ないと考えられる幽門保存胃切除例(PPG)について検討を開始した。実験が終了していないが、PPGに胆汁感染や遊離型胆汁酸は認められなかった。今後臨床例(PPG)との比較検討を進めていく予定である。
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