手術侵襲の生体防御機構への影響と術後感染ーサイトカイン・ネットワークを中心にー

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454335
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 斉藤 貴生 大分医科大学, 医学部, 助教授 (20037443)
• 研究分担者: 重光 祐司 大分医科大学, 医学部, 助手 (30235527) ; 下田 勝広 大分医科大学, 医学部, 助手 (90211292) ; 宮原 正樹 大分医科大学, 医学部, 講師 (10183641)
• キーワード: 手術侵襲 / 単球機能 / TNF-α / IL-1β / IL-6 / 肺臓器障害 / 活性酸素産生能 / 貧食能

研究概要

1.手術侵襲の単球サイトカイン産生への影響
手術侵襲の末梢血単球におけるTNF-α、IL-1β、IL-6産生能への影響をしらべると、侵襲の大きい食道癌手術が術直後に最も強く産生能を亢進させ、侵襲の小さい胃癌手術、胆のう手術の産生能亢進は僅かであった。また、この亢進時期には、末梢血IL-6値およびエラスターゼ値の上昇がみられた。
2.手術侵襲による単球サイトカイン過剰産生と肺臓器障害
食道癌手術により、術直後に単球サイトカイン産生能の著明に亢進する例がみられることから、亢進群(術後1病日、TNF-α>400pg/ml、IL-1β>200pg/ml)と通常群に分けて、2群間の肺臓器障害発生との関連を検討した。その結果、亢進群では通常群に比し、術1病日の血清エラスターゼ値が有意に上昇し、また、術後5-7病日のA-aDO_2が有意に高いのが認められ、単球サイトカインの過剰産生が術直後における肺臓器障害に関与していることが示唆された。
3.術前単球機能の術後肺炎発症への関与
術後に単球サイトカイン産生能が上昇した群ではA-aDO_2が上昇し、ほとんどの例(6例中5例)で肺炎が発症した。そこで、肺炎発症群と非発症群に分け、術前単球機能を比較した。その結果、肺炎発症群では非発症群に比し、術前における単球の活性酸素産生能が有意に高く、また、TNF-α、IL-1β産生能も有意に亢進していることが示された。このような術前における単球機能の亢進の要因を検討すると、低栄養および慢性閉塞性肺疾患の存在が関与していることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Saito,T.: "Complications of infection and immunologic status after surgery for patients with esophageal cancer" J.Surg.Oncol.48. 21-27 (1991)
• [文献書誌] Saito,T.: "Acute phase proteins and infectious complications after surgery in esophageal cancer" Jpn.J.Surg.21(6). 627-636 (1991)
• [文献書誌] Saito,T.: "Factors contributing to deficiencies in cell-mediated immunity in esophageal cancer patients" Jpn.J.Surg.22. 248-252 (1992)
• [文献書誌] Saito,T.: "Influence of surgical stress on bactericidal activity of neutrophils and complications of infection in patients with esophaqeal cancer" J.Surg.Oncol.50. 90-97 (1992)
• [文献書誌] Saito,T.: "Increases in immunoglobulin and complement in patients with esophageal or gastric cancer" Jpn.J.Surg.22. 537-542 (1992)
• [文献書誌] Saito,T.: "Impaired humoral immunity is associated with development of methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections after esophageal surgery" J.Infect.Dis.166. 1459-1460 (1992)