研究概要 |
サイトカイン活性化を簡単にかつ迅速の判定する方法が開発されれば、臓器移植時の免疫学的モニタリングをはじめとして多くの病態解明に貢献しうる。そこで、RT-PCR法を用いて末梢血中でのサイトカインmRNA発現を検出する方法を開発し、腎移植患者における変動を検討した。患者末梢血3mlよりAGPC法に準じRNA抽出を行った。既に報告されている、IL-1,TNF,IL-2,IL-2R DNA配列の一定領域を挟むやく20bpのプライマーをDNA合成機で作製し、抽出したRNAよりrandom hexamerを用いてcDNAを合成した。PCR産物を電気泳動し、サイトカインmRNA発現を検討した。陽性コントロールとしては、IL-1,TNFについては全血を10μg/ml LPS(lipopolysaccharide)で2時間刺激したものを、IL-2,IL-2Rについてはヒトリンパ球を10μg/ml PHAで24時間刺激したものを用いた。また、OK-432にて刺激された患者から得られた全血およぴFicoll-Hypaqueで単離したリンパ球についてIL-1,TNF mRNA発現を比較した。その結果、末梢血全血3mlから各種サイトカインmRNAを検討するのに充分なRNA量が得られた。全血から得られたRNAでIL-1,TNF mRNAを測定した結果は、単離リンパ球から得られた結果と完全に一致していた。腎移植術および腎移植後の拒絶反応症例について、末梢血全血3mlを採取しIL-1,IL-2,IL-2R,TNFのmRNAを検討すると、術前にはいずれのサイトカインも活性化されていなかったが、3例の腎移植術後および2例の拒絶反応症例ではIL-1,IL-2,IL-2R,TNFいずれのmRNAも発現していた。 今後は各種病態下の動態について検討し、移植後の免疫学的モニタリングに有用であることを明らかにしたいと考えている。
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