研究概要 |
肺移植後の免疫抑制状況における,潜在サイトメガロウイルスの再活性化の機序と急性拒絶反応との関連を,ラットを用いた動物実験モデルで研究した。 オランダ国マーストリヒ市のリンブルグ大学免疫学教室van Breda Vriesman教授と,同大学ウイルス学教室Bruggeman助教授の好意により,彼等が最近分離同定し継代培養しているラットのサイトメガロウイルスを提供してもらい,これを用いて基礎的実験を開始した。 ウイルスを10^5pfu腹腔内注入し,3週間後にラットが慢性感染になった状態で,これを潜在サイトメガロウイルス感染を有するラットとして使用した。このラットから摘出した肺を非感染ラットに移植する群と,非感染肺を潜在感染ラットに移植する群とを比較することにより,潜在ウイルスの移植後再活性化の実験が可能となった。このサイトメガロウイルス腹腔内注入による感染伝播率は100%と良好であり,感染実験モデルとして十分な信頼性があった。 さらに,このラットサイトメガロウイルス抗原に対するモノクロナール抗体を作成し,それを用いて免疫組織染色を行った。この手法により,細胞の核と細胞質内に存在するウイルス抗原を検出することが可能になった。そしてその結果を総合することにより,細胞質内のラットサイトメガロウイルスの分布を調べることが可能になった。 以上の如く,平成4年度の科学研究補助金により,肺移植後ラットサイトメガロウイルス再活性化に関する,感染条件の設定と,ウイルスの組織内分布に関する基確的研究を行った。この成果の一部は,米国雑誌「The Journal of Heart & Lung Transplantation」Vol.11,NO.6,pp.1031-1041,1992年に,発表した。
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