研究概要 |
肺移植後の免疫抑制状況における、潜在サイトメガロウイルスの再活性化と急性拒絶反応との関係を、ラットを用いた動物実験モデルで研究した。 オランダ国マーストリヒ市のリンブルグ大学免疫学教室van Breda Vriesman教授と、同大学ウイルス学教室Bruggeman助教授の好意により、彼らが最近分離同定し継代培養しているラットのサイトメガロウイルスを提供してもらい、これを用いて基礎的実験を行った。 平成4年度の研究で確立した、実験的ラットサイトメガロウイルス感染モデルで、平成4年度に作成した、ラットサイトメガロウイルス抗原に対するモノクロナール抗体を用いて、組織中のサイトメガロウイルスの分布を免疫組織化学的に検出同定した。 本年度は、潜在サイトメガロウイルスが関与する移植の組合せとして、BNラットをドナー(D)、LEWラットをレシピエント(R)として用いて、D+/R-,D-/R+,D+/R+,D-/R-の4種類の組合せの移植実験を行った。そして、移植後の急性拒絶反応を、サイクロスポリン、アザチオプリン、プレドニンの3剤併用免疫抑制療法で治療し、免疫抑制下での潜在サイトメガロウイルスの再活性化実験を行った。 結果:移植後3、6日目には、いずれの群でも、軽度の急性拒絶反応の所見が得られ、21日目には、免疫抑制剤の効果により、拒絶反応は治癒消失した。いずれの群でも、移植後3、6日目に、サイトメガロウイルスの再活性化が観察された。 以上より、本実験モデルを用いて、肺移植後の潜在サイトメガロウイルス再活性化に関する研究が可能であるめどがついた。今後は、さらに研究を進めていき、潜伏ウイルス再活性化の条件と、そのときのウイルスの組織内分布を解析していく予定である。
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