研究概要 |
骨髄移植や心・肺移植後のサイトメガロウイルス感染は、重篤な合併症であり、死亡率は非常に高い。サイトメガロウイルス感染の動物実験モデルをラットを用いて確立し、肺移植後の免疫抑制状況における、潜在ウイルスの再活性化の機序と拒絶反応との関連を解明し、閉塞性細気管支炎の組織変化との関連を研究することが、本研究の目的である。本年度には、とくに移植後遠隔期における慢性拒絶反応とサイトメガロウイルス感染との関係を研究した。【方法】MHCの異なる系(BN/LEWラット)で同所性左肺移植を行い、移植後2、3、4日目にcyclosporine25mg/kg筋注して急性拒絶反応が起きないようにした。肺移植後4カ月目の遠隔期ラットにサイトメガロウイルスを10^5PFU腹腔内投与して急性感染を作成し,感染後7、21日目に、組織中のサイトメガロウイルスの分布を免疫組織学的に検討した。そして、ウイルスが潜在化するか、あるいは、顕在化したままでいるかを研究した。対照群は、移植後非感染ラットと、感染非移植ラットを用いた。【結果】1.同種移植後サイトメガロウイルス感染群21日目の肺グラフトの2/3は、閉塞性細気管支炎の所見を呈し、強度にサイトメガロウイルス抗原陽性の細胞が検出された。2.この病変は、まだら状に分布し、他の部分には、サイトメガロウイルス陽性細胞は見られなかった。3.同種移植後非感染ラットには、急性拒絶反応や、閉塞性細気管支炎の所見は見られなかった。【結語】肺移植後の閉塞性細気管支炎の病変の形成に、サイトメガロウイルス感染が関与している可能性が示唆された。また、同病変には、サイトメガロウイルスが高度の親和性を有していた。今後の課題としては、移植肺における閉塞性細気管支炎の病理変化の形成機序を、今後もさらに継続研究していく必要がある。
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