研究概要 |
長期呼吸補助(ECMO)の手段として,シリコーンホローファイバ人工肺と圧力制御電子機器を組み合わせて,酸素添加専用に使用できる小型の大静脈内留置型人工肺システムを開発することを目的とした.そのためにin vitro回路で検討し,高圧酸素ガス使用にともなう回路流血中の過飽和酸素ガスの気泡を超音波気泡検出器で検出し,気泡が消滅するように高圧酸素ガス圧を電子制御機器(電空レギュレータ)で制御する回路を開発した. すなわち,シリコーンホローファイバ(内径200μm)を束ねたキャピラリ人工肺(0.3M^2)のキャピラリ外部流路の一方に高圧酸素ガス回路を連結し,他方を閉止した.人工肺循環回路の回路途中に脱酸素化人工肺(ポリプロピレンホローファイバ人工肺)を設けて窒素ガスを吹気し,脱酸素化したヒト保存血を熱交換器で血液温を制御して循環させた.シリコーンホローファイバ人工肺のキャピラリ外流路に高圧酸素ガスを押し込んだ.電空レギュレータで電圧で酸素ガス圧を制御した.血流量に対して相対的に酸素化し過ぎた場合には,流血中に酸素ガスが気泡化する.その時,人工肺の下流回路に装着した超音波バブル検出器で回路溶液中の過飽和酸素ガス気泡をリアルタイムで検出し,気泡の発生が停止するまで酸素ガス圧を電空レギュレータで減圧制御するシステムを開発した. その結果,血液中の酸素ガスが過飽和してバブルとなって発生しないように超音波気泡検出器から電空レギュレータに電気信号をオンラインで送って,酸素ガス圧を制御することができた.大気圧酸素を吹気する場合より,本システムを使用して酸素付加効率を向上すれば,シリコーン膜の表面積を減らせることができる,すなわちキャピラリを長くし,本数を減らして,大静脈内に留置しやすい酸素加専用体内留置型人工肺が開発できると考えられた。
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