胸腔内中央部(肺門部付近)に於ける横隔神経縫合修復 雑種成犬を用いて手術を行った。開胸し、胸腔内の横隔神経の頸部から上縦隔への移行部と横隔膜の中央にあたる、肺門部、大動脈〜肺動脈窓の前方で、横隔神経を鋭的に切断し、マイクロサージェリーを行って、一次的に縫合し修復(coaptation)した。横隔神経の切断部位はそれぞれの雑種成犬によって、横隔膜上8〜10cmであった。 4週間ごとに行った、表面電極を用いた横隔膜筋電図と経皮的頸部横隔神経刺激による神経伝導の評価は以下のとおりであった。すなわち手術後4週間目、8週間目では神経伝導の回復を認めなかった。手術後12週間目から、横隔膜筋電図と頸部横隔神経刺激の双方で横隔神経伝導の回復を確認した。得られた結果は、切断部位から効果器(筋肉;横隔膜)までの距離と未梢神経の再生速度からみて、予想通りのものであった。横隔膜の筋肉としてのパフォーマンスも充分なものが得られた。 平成5年度は肋間神経を用いて、神経移行術を行うことを計画している。肋間神経は下部肋間になるほど、感覚神経枝は太いが、運動神経枝は細く短くしか同定できない。胸骨に付着する前胸部内肋間筋と外肋間筋が吸気筋であるので、これらを同定したうえ、横隔神経の横隔膜直上で縫合して神経移行術を行うように計画を進めている。
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