胸部外科手術後の横隔神経麻痺は、呼吸機能の損失を惹起し重大な合併症を引き起こす。そこで横隔神経も他の末梢神経と同様に再建できることを確認し、再建が可能ならば再生過程を知ることを目的にして、雑種成犬の横隔神経を横隔膜上3cmで切断し、直ちに一時縫合する実験を行った。横隔神経刺激と横隔膜筋電図経時的に測定することによって、手術後8週間目までに横隔神経伝導の回復がおこなわれることが明らかになった。神経伝導速度や筋誘発反応の振幅の大きさ等の神経学的所見は術前と変わず、神経機能は回復することが証明された。神経、横隔膜筋肉の組織学的検討でも横隔神経が切断後に縫合することで機能回復することを支持する結果を得た。神経再生速度は通常の末梢神経とほぼ合致して1mm/dayであった。横隔神経再建術は胸部悪性腫瘍切除後の横隔膜機能回復のための神経外科手術の対象となると考えられる。
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