研究課題/領域番号 |
04454349
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
北村 惣一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10028607)
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研究分担者 |
川田 哲嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (60204731)
福富 正明 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (40221535)
谷口 繁樹 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (90183467)
河内 寛治 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (90116020)
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キーワード | 同種弁 / 凍結保存法 / 組織銀行 / フローサイトメトリー |
研究概要 |
病理解剖時にヒト同種弁として大動脈弁と肺動脈弁を採取して保存実験を行った。プログラムフリーザーを用いた細胞凍結法を導入し、弁組織の細胞の保存性を検討した。ヒト同種生体弁を、TC-199液体培地に抗生物質、仔牛血清、緩衝液を加えた保存液に浸漬し24時間冷蔵した後、細胞凍結障害保護剤のジメチルスルホキシドを加えた保存液に浸漬し、プログラムフリーザーにより凍結し、保存用液体窒素容器内で保存した。細胞の形態的な保存性とフローサイトメトリーによる細胞の生存性を指標として弁凍結プログラムと保存液の基本的な組成を決定した。その結果、冷蔵保存の保存期間での形態学的変化を凍結保存と光顕的、電顕的に比較検討し、凍結保存が長期的に細胞形態を良好に保存しうることを報告した。また同種弁保存方法による細胞保存性をFDA-PI染色を応用したフローサイトメトリー法で、比較検討した。凍結保存では2ケ月保存後で、生細胞が85%存在し、摂氏4度での冷蔵保存より有意に優れている所見を得た。FDA-PI染色を応用したフローサイトメトリー法は保存液の組成、凍結保存至適プログラムの設定、移植実験における移植片組織の細胞生存性などの検討に応用できると考えた。これらの結果をふまえ、保存同種弁の臨床応用を開始した。一方、同種生体弁の採取を、近隣の施設に対象をひろげ、供給情報の連絡方法、患者情報などの管理方法を確立するよう努め、広報パンフレットを作製し、コーディネーターの協力を得て各協力施設にアピールする活動を開始し、死体腎ドナーからの同種弁提供を実現した。提供を受けた肺動脈の一部を試料として、フローサイトメトリー法により採取に要する温阻血時間(WIT)と細胞の生存性の関係を検討した。臓器摘出に要する程度の短時間のWIT(520分以内)では、凍結保存後でも依然高い細胞の生存性をしめした。死体腎ドナーから同種弁の同時提供を受けることは、より質の高い同種弁保存に結びつき、移植医療システムの中で、意義のある対応であると考えられた。
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