研究概要 |
in vitroにおいてヒトglioblastoma細胞株を用い、PDGF,TNF,GM-CSFなどの成長因子あるいは成長抑制因子依存性増殖能とその受容体発現を解析した。また、glioblastoma細胞よりのIL-1,IL-2,IL-6,IL-8,PGE2,TNF,Mn-SOD,GM-CSFなどの産生をmRNA発現・蛋白産生定量・培養上清の生物活性に関して測定した。同時に神経膠腫患者より得られた髄液を解析することにより、これらサイトカインや増殖因子がin vivoすなわち腫瘍担体中枢神経系にて存在するか否かの検討も行った。ある種のヒトglioblastoma細胞はPDGF刺激により増殖を促進しその増殖はtrapidilにて抑制された。TNFはglioblastoma細胞に対して殺細胞的に作用すると従来報告されていたが、平成4年度の研究者らの結果では生理的低濃度のTNFは細胞増殖抑制的に作用するのみであることが明かとなった。また、TNFの細胞増殖抑制効果とDNA合成抑制効果は、glioblastoma細胞のG0/G1細胞周期への集積効果と密接な関連があることが推定された。GM-CSFはglioblastoma細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。glioblastoma細胞はPDGF,TNF受容体を発現するが、GM-CSF受容体を発現しなかった。PDGF,IL-1,IL-6,IL-8,GM-CSFなどのサイトカインは無刺激の状態にてglioblastoma細胞より恒常的に産生されていた。TNF刺激によってIL-6,IL-8,GM-CSFの顕著な産生増加が生じた。患者髄液中には、IL-1β,IL-6,IL-8が同定されたが、インターフェロン,IL-2,GM-CSFは存在しなかった。平成5年度は、これらの中でも特にTNFを中心としてglioblastomas細胞の増殖と分化に及ぼす影響をさらに詳細に検討するとともに、サイトカインの患者体液中の動態と腫瘍増殖・中枢神経系内免疫・炎症反応との関連性を検索する。
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