研究概要 |
グリオーマ細胞のオートクライン機構に基づく増殖機構に関与すると思われる諸因子を遺伝子レベルで調節し、その増殖を制御するアンチセンス療法を試みた。ヒトグリオーマ細胞株7種類より、既存の方法でmRNAを抽出した後、環状の2本鎖cDNAを合成し各遺伝子の第1、及び第6エクソンをプライマーとして用いるPCRを行い、各細胞の遺伝子の発現形式を検討すると、TGF alphaが5種の細胞に検出され、neu,c-mycも、3種類の細胞に認められた。各遺伝子の存在が確認された細胞の核内取り込みを検討すると、TGF alphaは48時間で最大値を示し、neu/erbB2もより早期にピークを示し、これらの翻訳は比較的早期に始まるものと思われた。次に、細胞の分裂増殖能に及ぼす影響を検討すると、アンチセンスTGF alphaオリゴマーを1micoM加えると分裂細胞数は、3、4日目より著明に減少し、アンチセンスTGF alphaオリゴマーを1microM加えるとU251細胞では最高で75%も抑制された。更に、TGF alphaに対する抗体を加えると、この抑制効果は増強され、U251細胞では48時間後には、約20%にも抑制されるようになった。他の増殖因子に対するオリゴマーを用いた検討では一定の傾向は認められなかったが、グリオーマ細胞の分裂増殖へのTGF alphaの深い関与が示唆され、こうしたオリゴマーを用いたグリオーマ細胞の増殖機構の制御も可能と考えられた。
|