ヒトグリオーマの手術標本より腫瘍血管内皮細胞の分離培養を試みたが、標本量の少ないためもあり、初代培養は少量は何とか可能のこともあるが、継代培養にはまだほど遠い状態であった。他のヒト細胞の培養も通常の培養条件では難しいことが知られており、培養基質の変更、培養液の変更などもいろいろおこなった。また種々の成長因子やヒト血清なども試みているが上手くいっていない。 in vitroにてコラーゲン上に培養されたラット脳血管内皮細胞とラットグリオーマ細胞を共培養すると、グリオーマ細胞のうちC6グリオーマ細胞が血管新生を促進することが分かっており、今回はこれにたいして、種々の濃度のサイトカイン、生長因子などを添加し、その影響を調べた。TNF(tumor necrosis factor)はin vivoにおいても血管内皮細胞に働いて血管新生を抑制することが知られているが、今回のin vitroの実験においてもTNFはC6グリオーマ細胞によって引き起こされる血管様構造物の新生を抑制する作用が認められた。この作用は必ずしも用量依存性ではないようであった。TNFはC6グリオーマ細胞の増殖にたいしてはむしろ促進する方向に働くため、TNFは直接血管内皮細胞に働いているものと考えられた。他の薬剤は限られたものしか検討できなかったが、明らかに血管新生を促進あるいは抑制すると思われるものはなかった。今後血管新生を抑制する物質を探索していき、みつかればin vivoの実験も併用していきたい。
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