研究概要 |
ラットの脳血管内皮細胞を用いて、in vitroにて血管新生モデルを作製した。上室下室、二室よりなる培養皿を使用し、上室にはあらかじめタイプ1コラーゲンをしき、更にそのうえに血管内皮細胞を培養した。しばらくすると血管様構造物が出現した。ラットグリオーマ細胞であるC6細胞を下室に培養し、上下室を組み合わせると血管様構造物の形成は促進された。 TNFは腫瘍の壊死を引き起こすサイトカインであり、正常血管には作用せず、腫瘍血管に選択的に作用すると言われている。TNF(tumor necrosis factor)-αは血管内皮細胞の増殖を抑制するといわれているが、血管新生に及ぼす影響は明かでない。今回上記の血管新生モデルを用いて、TNF-αの血管新生に及ぼす影響を検討した。その結果上下室を組み合わせる際に上室の培養液に100U/mlのTNF-αを加えることによって血管様構造物の形成は抑制された。またTNF-αの血管内皮細胞増殖に与える影響を、血管内皮細胞を培養したのちTNF-αを含む培養液に変更し、^3H-thymidineの取り込みを測定する事により検討した。その結果TNF-αは血管内皮細胞の増殖を抑制したが、100U/mlと1,000U/mlでは抑制の程度に差を認めなかった。TNF-αは血管内皮細胞の増殖と血管新生をともに抑制し、成長のために多くの血管を要するグリオーマの治療に有用である可能性が示唆された。
|