従来ウシ、ラットなどで用いられてきた血管内皮細胞培養法を用いてヒトグリオーマの手術標本より血管内皮細胞の分離培養を試みたが、初代培養は何とか可能であったが、継代培養には至らなかった。通常の培地に含まれていない血管新生を促進する因子が必要であると思われた。 グリオーマ細胞の血管新生に及ぼす影響をin vitroにおいて、共培養システムを用いて検討した。血管内皮細胞はFisher 344ラットの脳微小血管より得られた。グリオーマ細胞はラットのC6およびT9細胞を用いた。コラーゲンゲル上に血管内皮細胞を培養すると、しばらく経つとゲル内に血管様構造物を形成し、血管新生モデルと考えた。この血管新生モデルとグリオーマ細胞を共培養した。C6細胞は血管様構造物の形成を促進したが、C6細胞のならし培地は血管内皮細胞の増殖を抑制した。T9細胞は血管様構造物の形成を促進する作用が弱く、またそのならし培地は血管内皮細胞の増殖にほとんど影響しなかった。hTNF(human tumor necrosis factor)-αはC6細胞により誘導された血管新生を濃度100U/mlで抑制し、またhTNF-αは血管内皮細胞の増殖を抑制した。これらの結果より血管新生を促進する能力はそれぞれのグリオーマ細胞により異なり、かならずしも血管内皮細胞の増殖とは平行関係になかった。TNFはグリオーマにおける血管新生の抑制物質である可能性が示唆された。
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